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僕と彼女の声帯心理戦争

第4章 【第1章】嵐の前の静けさ Day2


そう思う間に、止める間もなく葵がスタスタと洞窟に入る。

あっ……

そう思ったのもつかの間、今度はえっ…という杠の声。

洞窟の中で、司に壊された石像を組み合わせている杠と、それを静かに見下ろしてる葵がいた。
彼女は気配も消せるから、杠も気づかなかったのだろう。驚愕に満ちた顔は、やがて焦りを見せる。

どうするつもりだ?

羽京が見守る中、すう、と彼女が息を吸う音がした。

「手伝うよ」

「「え……」」

思わず自分も微かな声が出た。驚いたのは杠もだ。

「……私は科学王国のスパイでも何でもないし、どちら側とはハッキリしてないよ。だけど、ひとつ事実として言うとーー司君の石像破壊は、もう今後は増えないよ」
「ど、どういう事…?」杠が尋ねる。

「私が止めたから」ニコッ。葵が笑う。

「……人が殺されるのは、見てられなかったから。だから」一度殺された人も、助けさせて。

そう言うと、葵が奥の方に目をやった。

そこには杠の努力の結晶である、くっつけられた石像達があった。
そのひとつに手を伸ばし、彼女が優しく撫でる。

「……頑張ったね」ぽつり。そう呟いた。

それは石像に対してなのか、後ろに居る、杠に対してなのか。それとも、両方か。

「葵ちゃん……」
「ハケ、もう1個ある?」いつものふんわり口調じゃないからか、本気に聞こえる。あ、うん!と杠が慌てて道具を貸し出す。
ありがとう、と言うと彼女は今やってる人の分は大丈夫?次の石像パズルはどれ?と端的に聞く。

「……じゃあ、今やってる人の分しか無いから、この人の分を手伝って貰ってもいいかな?一人分しか持ってきてないから…」
「分かった~」杠程では無いがテキパキと作業を進める。

その姿に本気で手伝うつもりだ、と悟った杠が呟く様に言った。

「……ありがとう、葵ちゃん」
「んん~?人を助けるのは当たり前ですから。礼には及ばないですよ~」えへへ、と笑いながら作業する彼女に、杠もふふ、と思わず笑う。

あ!と杠が叫ぶ。

「……監視の…」「羽京君なら石片運ぶ音で気付くかな~」「わお……確かに…」

青ざめる杠。対して冷静に葵が言う。
「私も音で気付いたから。石片の音で何となく何してるかは予想できたし。でも敢えて放置してる。だから」
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