第4章 【第1章】嵐の前の静けさ Day2
翌朝。
「…………」
羽京はきちんと横になって寝たというのに、あまり眠れなかった。正直、いつもの様に森で一人眠るより睡眠時間が短くなった。
原因は隣ーー正確には横のベッドの上で眠る葵だ。
「そんなに寝てる間に脱走して欲しくないなら、一緒に寝ちゃえば良いのでは~」
ドーン!!と爆弾発言をするわ、その後強引にご丁寧に整えられた布団も用意されるわで床についたのはいいが……
「すーすー…すぴゃ……ごふぁ…ん…」
警戒心0で眠る彼女。しかも時折寝言を言うのだ。
「んん…うきょ…くん……」
!!!?!!突然明らかに自分の名前を呼ばれて固まる。まさか、あえてやってるのか?
そーっとベッドを覗き込む。女の子の寝室で眠るどころか、覗き見するなんて本当は良くないが……
まあ相手は何をしでかすか分からない葵だ。
覗き込んで、ちょいちょい、と人差し指で突っつく。
「……ん……すぴぃ……」軽い反応はあるが、起きない。視線を送るも、全然起きない。寝言こそ言うが、特に寝相が悪い事も無く、布団は綺麗なままである。
「ふへへ…ごはん……」
そんなにご飯が好きなのだろうか……。
仕方なく、羽京は黙って葵に背を向けて眠る事にした。
が、勿論熟睡なんて出来る訳が無かった。
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おはようございます~と昨晩の事が嘘のようにテンプレのニコニコ笑顔を貼り付けた彼女。
「羽京君、眠れました?」「いや、全然」
えーなんでーと言う彼女を放置。
そのまま朝食を手伝い、今度は杠の工房に集まった。
『男子禁制』という事だが、一応監視をしておく。
だがまあ、聴いていた限りは全く問題が無さそうだ。特に昨日の雰囲気も引き摺って居ない。
……引き摺っているのは、僕の方だけか。
そう思った頃、葵が羽京の元にやって来る。
「終わりました~」「そっか」
「そして始まります~」「そっ……何が!?」思わず突っ込んだ。
だが相変わらずスルーして彼女はスタスタと歩く。
その先は羽京も知っていた場所だった。
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(ここは……)
目の前には洞窟。そこに袋を抱えて入って行く杠が居た。……袋の中からは、石片の音。
自分は放置していた、科学王国の民の『極秘のミッション』だった。
まさか、彼女も気付いていたのか?