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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


調理をサボりつつ盛り上がる周囲を落ち着かせて作業させつつ、羽京は2人を見やった。
司に今後食後にライブする了承を得ている。司からすれば、今まで孤独だった彼女の居場所が出来る様なもので止める理由は無い。

……司は恐らく、葵の本性を知らない。
だからといって、自分しか知らないだろう彼女の美しい姿も恐ろしい姿も、教えてしまいたくない。

自由奔放な恐ろしい悪女か、それでいて他人を命懸けで助ける様な事をする聖女か分からない。今だけでも。他の人には口外したくないーー

理由は分からないが、そう思った。

******
「これうめえ!!」「お代わりしてえな!」「ってかアオさんの手作りってだけでもうやべえ」

今日の晩ご飯も昨日に負けず劣らず盛況している。

葵は羽京の左隣に座りもぐもぐと食べつつ、明日も煮込むと更にイノシシさんが美味しくなるので楽しみにしてて下さい~と微笑んでいる。

「うん、これは美味しいね。料理の時も凄く手馴れているようだったけど……普段から料理をしていたのかい?」司が尋ねる。
「はい~。料理が好き…と言うよりは、料理を作って喜んで食べてくれる人が居るのが好きなので。よく作ってました~」
「そうか」完全に夫婦の様に穏やかな会話をしている二人。

「あ」一足早く食べた葵がそう呟いた。
「ライブに使う椅子、忘れてました~取ってきます」そう言うとひょこっ、と彼女が抜け出した。

僕もと言いかけた羽京だが、隣の帝国人に袖をガシッと掴まれる。
「羽京、ちょっといいか?」彼に気を取られた間に彼女がピューっと行ってしまう。不味い。
「うん。俺が一緒に行くよ」見かねた司が彼女を追いかけた。司が行くなら、監視の必要も無いだろう。

「アオさんなんだけど…3700年間、起きたまんまで1人で復活したっての、本当か?」
司が口止めしてた事実。だが、彼女が明らかに司が復活させた人物ではないのは、誰の目でも明らかだった。
「……うん。そうだよ」
やっぱりそうなのか!!3700年もずっと眠らなかったとかすげぇ!俺らなんかよりメンタル強そうだな!?などと盛り上がっている。

アオさんなら、司の隣に立てる人物だーー
そう纏まっていく周囲に、プロデューサーとして羽京は彼女に関する質問に答えつつ、彼女の大きくなっていく存在感に震えた。
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