第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1
えっ、と総員驚愕。「大学生!?」「すげー!頭良さそう」と好感触な声が多い中、1人のファンが羽京に険しい顔で問いかける。
「おい羽京。なにアオさんのプロフ聞いてんだよ」
「あはは、ごめんね?でももう大丈夫なんだよね」そう葵に会話の矛先を向ける。
「はい~」竈の火加減を見ていた彼女がひょこっと顔を出す。
「ツアーの話はしましたよね、羽京君。今私作業中なので、バラシといて下さい~」そう言うと彼女はまた竈に向き直る。
やられた。逃げられてしまった。もうこれ以上、この場で質問は出来ない。
『プロデューサー』という肩書きを作らされた以上、事情を知っていても違和感は無い。この流れで絶賛作業中の彼女に説明させる訳にもいかない。
仕方なく『Aonn』の10周年記念ライブやプロフィール公開等を説明すると、周囲がうおおお!!と歓声に湧く。
すげぇすげぇ!!そんな情報あったのか!!これ復活した俺ら勝ち組じゃね!?
勝ち組。
まさかとは思うがこのまま行けば、Aonnとして彼女は司帝国に居る面々の士気向上の重要な担い手として高いポジションを得るつもりなのかな?チラリと彼女を見やるが、羽京の視線に目もくれずふんふん~と取り分ける用の器を用意していた 。
「今日は一段と賑やかだね」
「「「「司さん!!!」」」ばっ、と皆が頭を下げる。羽京も軽くお辞儀をする。
「おや、晩ご飯も手伝ってるのかい?葵」
「はい~。今日はイノシシさんの縄文鍋ですー」
「そうか。今朝のご飯も美味しかったよ」穏やかに司が微笑む。
「ありがとうございます~」
薪をくべていた葵が笑う。
まるで夫婦の様にニコニコと会話する姿に、周りはヒソヒソと話をする。
アオさんと司さん、お似合いだよな…。ああ、なんか霊長類最強の高校生の隣に並んでも引けを取らないし……美人の嫁さん、っつーか。二人ともいつも動じねえし。いいよな~
「司君の分も勿論ありますよ~沢山食べますもんね」
「ああ、ありがとう」周囲には目もくれずに話す二人。俺も手伝うよ、と言う司に、じゃあ竈が複数あって様子見するの大変なので、こっち見てもらえますか~?と指示する葵。
「アオさんなら女王様とか」「いや、姫じゃね?」「いや、司さんがキングだから」「なるほどな」「お姫様と騎士は?」「それいいな!お前天才かよ!」
