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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


「……!?葵…アンタ……」
「……え」

つう、と涙が頬の十字架に伝っていた。

「あ、ごめ…なんか…」言葉が、出てこない。
駄目だ、私は大人なんだから、ちゃんとしなきゃ。

「葵ちゃん……そっか、辛かったんだね…」
「葵…アンタがいちばんアウェーな存在だったから…そうだよね、アンタがいちばん寂しいよね…」

「そ、んな事は…」
本当に違うのだ。自分の持ち合わせてなかった青春。若い真っ直ぐさ、純粋さ。
ーーあの頃に戻れない自分。惨めな自分。

だが、勘違いされてるのであれば、そっちに繋げなきゃーー
言葉を絞り出す。出来るだけ、本気で、一言一言が魂から出た叫びの様に…

「わたし……司君に…復活…された、人じゃ…無いの……」

「……!!」

事実を知っていただろうニッキーと、杠の顔が驚愕の色に染まる。

「だから…居て、いいのかな…って……思って、た……」

「アンタ……アンタ……!!!」
ぐずっ、ぐずっ。ニッキーが泣き出す。

「そんなの、当たり前じゃないか……!!」
「そうだよ、葵ちゃん……!!」

杠まで貰い泣きしている。女子会どころではなく泣き会である。こ だが、もうここまで来れば行くところまで行って、最後はスッキリ締めるしかない。頭の中で地図を描く。
大人として、年長者として。若い子には、出来れば笑っていて欲しい。それが私に出来る事だから。

この子達に、悲しい想いのままこの場を去るような事は、させない。

「私…ずっと、新しい…曲、考えてた……そしたら、急に…起きちゃって……」

同じ科学王国のスパイ容疑の監視役として事実を知っていたのか、静かに泣くニッキー。

「………えっ…!!」知らなかったのと、恐らく科学王国の『千空』と復活方法が同じだからか驚いた、杠。

「……だから、ずっと寂しかった…けど」グイッ。涙を拭う。そしてへへ、と少し無理をしてる様に笑って見せた。ーー実際、事実と違う事を言ってるので、変に真実味が増した。

「私、二人と……こうして話せて良かった。二人とも、ありがとう」

「……葵ちゃん……!」私も、と続けかけた杠を制止する、ニッキー。その身体は、震えていた。

「……杠。もう気付いてるだろうから言うよ……私はね、アンタと大樹の『監視役』なんだ」
「「……っ!!」」
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