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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


今後のリクエスト頻度などを見つつ、一旦今日はリクエスト無しで歌って、明日からリボンを渡す事になった。
時計が無いので、集まる時間は決められない。暫くは朝食後からこの杠の工房で作業、とだけ決めた。

歌うリクエスト曲は一日一曲、と決める。
それがいちばん分かりやすいし混乱しないだろう、という結論。リクエストは葵自身がライブ後に受け付ける。

目の前で本人が刺繍する姿なんてファンからしたら最高じゃないか!というニッキーの声、曲名のスペル等完全に把握してるのは自分だから効率がいいという具合だ。

これでひと通り話が纏まった。
ふう、と心の中で息をつく。これで目的は達成出来た。思ったよりも上手く2人の心の距離が縮まった様に思う。目標以上の達成率だ。



ーーふと、ニッキーが零した。
「なんか、いいねこういうの」
「「?」」

杠ちゃんと二人ではてなマークを浮かべた。

「あ、イヤさ……。ここって結局、司の国だし、男ばっかり復活するからさ。……こういう、『女子会』……みたいなの?やってみたかったんだ」

あ。そうか。
心の中の自分が呟いた。

この国は男の人が多い。武力優先で復活させるのだから、力だとどうしてもそうなるし、女性の武力担当はほとんど居ない。

ましてや自分や杠は司が復活させた存在ではない、アウェーだ。
アウェーの私たちだからこそ、こういう愚痴……本当は心の奥にしまってた不満とかを出せたのかもしれない。

「ううん、私の方こそありがとう!ニッキーちゃん」
いつの間にかちゃん付けする程仲良くなった杠が言う。
「私も…寂しくないか、って言えば、ちょっと寂しかったし…こうやってお話出来て良かった」
そう笑う杠。ああ、とため息が漏れる。
いい子達だなあ。汚れた自分や穢れた世界も知らない。

司帝国の人達は、若人の理想郷という事で若手ばかり復活させられる。だからこそ持っている青さ、真っ直ぐな心ーー

なんで気付かなかったんだろう。昔なら難なく同意出来たし気持ちがよく分かったのに。

私は寧ろ『自分に都合の良い様に世界を操作する』事しか考えて来なかった。
寂しさ、なんてのはなかったのだ。1人でいるのがデフォルトな自分に、そんな感情は既に無いし3700年1人だったから気にもしてなかった。

ーーかつては自分も持っていただろう感情、心を、目の前に突きつけられた。
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