第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1
だがここで問題が発生している。
「…あ、でもでもお洋服の分は大丈夫なんです?」
「「あ」」
シーーン。静まった場を取り直すかのように、杠が焦った様に話す。
「大丈夫!!リボンって、基本女の子の服だから、あんまり使わないし!染めるのも私がやるよ!」
「それだと杠ちゃんだけに負担が…!」
「それは…」「アタシもやるよ!!!」
ズズい、と杠と葵の間に割って入るニッキー。
「「えっ」」
「あ、いや、アタシが言い出したんだからさ、こういうの手伝うのが筋だろ?リクエスト曲いっぱい2人に聞いてもらったしさ…。だからやるよ。それに、葵の役に立てるなら、これくらい安いもんさ」
そう言ってのけるニッキーに、これには流石の自身も男前過ぎて本気で「ニッキーちゃん…!」という声が出る。
「2人ともありがとう!…でも、せっかくの私のグッズだから、私も何かしたくて…なんて言うのかな、ロゴ?とか入れたいな…!」
「わお!それ、いいかも!」
「アンタの名前を入れたらどうだい?Aonnってさ!本人直々のサイン入りグッズ!」
「なるほどです!それなら私も貢献出来そうで良かったです〜」ホッとした様に微笑む。
「あと、アンタのその綺麗なヒビもどうだい?」
「へ?」やばい。マジで驚いた声が出た。
まさかこのヒビの事まで言われるとは。
「ああ!私のほっぺのやつですな!!」
普段見えないから分かんなかったと笑ってみせる。確かに鏡も無いし見えないと気付かないよね〜と2人が笑う。
ーー正直、神は死んだどころか、最初から居ないと思ってる自分にとって、このヒビは嫌悪すべき対象だ。だって、××君は死んだ。彼は敬虔な信者で、いつもロザリオを持ち歩いていた。
……目の見えない彼が。信じていたのだ。見えない彼が、見えない神様を。でも彼は死んだ。
唯一の友達のリリちゃんも、もしかしたらーー
だがここで断れば流れが悪くなる。ぐっ、と自身の感情にフタをした。
「アンタのヒビ、十字架みたいで格好いいし、どうかい?」「そ、そうかな…!?」
「うんうんっ!凄く綺麗に入ってて、羨ましい!」
「そっか〜ありがと!じゃあサインと〜この十字架マーク入れる感じで!」
決定!そうパンと手を叩く。
わあっと盛り上がる雰囲気のまま、作業について話を詰めていく。