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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


いいですな~!と杠も同意している。監視役が交代する形になるが、これなら監視自体は外れないから司も咎めない。
羽京は心中を顔に出した事を苦々しく思いながら、「じゃあ、大樹。君の好意に甘えるよ」と笑顔で答えた。

そして、自分の耳の届かない所で女子会が始まったのだった。

******
「リクエスト、これで全部ですかね~」

雑談しながら作業していた私ーー西宮葵はニッキーに微笑む。

「ああ!ありがとね、葵。…杠も」
「いえいえ~、私より杠ちゃんの方が手が早いし凄いです~」
私は杠の方に話の矛先を向けた。

「いやいや!私なんてまだまだだよ…!」慌てて謙遜する杠。ニッキーのリクエストした曲を全て記載するのは難しい。だから二手に分かれて作業するーー

そういう名目の上、無理やりニッキーと杠を同室の中で過ごさせた。杠にこうやって少しでも恩がある以上、今後色々やりやすくなるだろう。……大樹と杠。2人が科学王国の内通者なら。

「謙遜しなくて良いのです~!」そう言って今度は杠に微笑む。これは本当だった。雑談話を広げて、空間が気まずい感じにならない様にしながら手元を見ていたが、彼女の手さばきを見る限りかなりの上級者だ。

問題はこれからである。この2人の監視役と監視対象としての関係性を薄める。ニッキーに「情を抱かせる」のが最大目標である。何処まで行けるか分からないがーー
それでも。やるしかないのだ。

この数日の間に、この司帝国を自身に有利な盤上の世界に作り変える。今の司帝国は、完全なる「武力」のみでランク付けされた国家。自分に不利なゲームの中にいる。そこに自分が一つの勢力として食い込むーー即ち、自分も参加できる『ゲーム』にする。そして今後の科学王国との争いに置いて事を有利に進める為にはこの『女子会』が必要だ。

羽京君については元々席を外させるつもりだった。が、少し警戒心を持たせただけで大丈夫だった。『女子会』と銘打った以上、あの2人は入ってこない。
昨晩『大樹と杠と会う』と言ったのもブラフで、本命はこっちだ。

私は普段から息をする様に演じてきた、道化の悪女だ。ーー大丈夫。私は悪女だ。
これからの話をどう運ぶか、常に冷静に思考し、発言し、演じろ。
少しでも、血を流さない為に。
私は仮面を被り、ニッキーに笑顔を向けた。
…思いつきを装って。
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