第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1
「えっとですね~、ニッキーちゃんは3700年前、ちょうど私がデビュー10周年で記念ライブツアーをするって発表してたの知ってます?」
「勿論!!アメリカでリリアンとのコラボもあるあの特大世界ツアーのやつだろ!?」
そんな大規模なツアー予定があったのか…と羽京が感心する。
「で、ですね~。私の今まで公開してなかったプロフィールとか経歴…諸々全部ネットの公式サイトとかSNSで事前に公開予定だったんです」
「ええ!?」これには一同驚いた。世界で唯一の、超有名でありながら顔のないトップクラスの歌姫が10周年記念で顔出し&プロフィールを突然公開。
さぞかし話題になるだろう。
「ちなみにそれが石化した時の2週間後に公開予定で~。もちろんツアーは私がみんなの前で生歌を披露する、って告知も入ってて。初めての本格的なライブでめちゃくちゃ忙しかったんですよー」
「もしかして復活から2週間経ったから今それを言ったのかな?」
「おお、羽京君大正解です~!まあこんなご時世なんで、プロデューサーのお顔を立てる義理も無いかもですが…一応、ですね~」
ほ~、と大樹が感心した声を出す。
「そっちの世界の事はよく分からん!だが、葵がプロなのは分かったぞー!!」
「大樹、いい事を言うじゃないか!!葵、アンタすごいね…!こんな世界でもプロの歌手を貫いてる…!」また感極まったニッキーが泣きかける。
「いえ、それほどでも~。リリちゃんとルームシェアしてた話とか色々ありますよー」
「っ…なんだって…!?!?」
「私、アメリカに語学留学してたんです~。その時にリリちゃんのコンサートにも出たんですが、その頃にはお友達だったのでお部屋にお邪魔を」
「その辺の話を詳しく!!!!」
ズズいとニッキーが顔を寄せる。
「今度は顔が近いんじゃないかな…?」羽京が止めに入る。
「…!!そうだね、羽京!本当に済まない、リリアンの話になるとこうなるんだ…!」頭を下げるニッキーにいいえ~とほわんとした回答をする葵。
「でも、長話になりそうですね~。何処かゆっくり座ってお話しましょうか~?」
「いいのかい?!」ニッキーの表情が輝く。
「あっ、それなら私の手芸の部屋が近いかも…!」
杠の手芸工房。そこには、司帝国の唯一の手芸班である杠専用に手芸用品が揃った小さな部屋だった。
