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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


「でも昨晩のライブの時は居ましたよね。んん~??」はてなマークを浮かべる葵。

「君の監視があったからね。君が来る前も、僕は基本ここの警備員みたいなものだから、森で過ごす事が多いんだ。だから1人で森で食べるかな」
「ほへ~」納得した様なしてない声で彼女が頷く。

はっ、と羽京は気付く。まさかこの緩い雰囲気で個人的な事を聞き出すのだろうか。よく考えれば、彼女はずっと何でもかんでも帝国内の人物に尋ねていた。その綺麗な容姿と可愛らしい仕草から、やれやれとみんな何も知らない純粋無垢な幼子に物事を教える様に帝国内の情報を漏らしていた。自分も昨日の様子を見るまでは特に警戒していなかったが、あれはーーーー

「あの~なんか物騒な事考えてそうですけど~
今のは本当に何の意図も無いです、申し訳ない」
ぺこっ、と頭を下げる葵。
「あ、いや、ごめんね」「なんか思惑あった方が良かったですかね?ご期待に添えず申し訳ない~」「いや無い方がいいから!」何故だか彼女が居ると普段は黙って心に閉じ込めておく言葉が飛び出る。いつもの自分ならそんな事ない、などとあしらうのに。

「……うふふ」「……え」「あははは、羽京君焦り過ぎ…!!ふふっ…」「えっ、ちょ…」今度は急に笑い出す。しかも楽しそうだ。

「あはははは…!!あっ、ごめん、なんかツボって」「何処にそんな要素あったのか謎だけど…」「だよね~ふふふ…」また始まった。今まで監視してきて、今日みたいに笑い転げてる姿なんか見た事無い。暫くして、はー笑った笑った、と落ち着いた。

「笑いすぎだよ」「えへへ、ごめんね?」そう言って笑いかけられる。謝る顔もまた整っていて様になるので、ああ確かにみんなが彼女位の美人は良くも悪くも罪深い、と言う気持ちが分かる気がした。

「いいけど、今日は大樹と杠の所行くんでしょ?」
「せやったわ…」突然の関西弁と真顔。ダメだ、この子と居ると空間が飽和するし、自分が逐一止めないと危ない。

「え、忘れてたの!?」「うん~」ニコニコ笑う葵。
早く監視終わってくれ……このマイペースさは流石に心臓に悪すぎる。先程の綺麗な笑顔といい、傍若無人すぎる振る舞いといい。内心羽京は溜息をつきながら、れっつごー!うぃずみー!と適当すぎるひらがなで聞こえる英語で掛け声を叫ぶ葵の後を追った。
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