第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1
だが、彼女がひどく司帝国内の男性陣にモテるというのは…分かる気がした。こんな風に微笑まれては堪らないだろう、と思う。
「……?どうかしました?」
「え、いや」思わず答える。まさか見惚れていた、とは言えなかった。
「私の顔、見惚れてました?」あ、うん。言っちゃったね。そう言えばこういう子だった……忘れてた。
「私の顔、綺麗らしいので~。私はそうは思えませんけど」
よっこら、と彼女が岩から降りて目の前に体育座りをする。下手をすれば女性陣辺りから反感を買いかね無い発言だが、彼女に関してはあまりにも人形の様に整いすぎて最早反論すら出来ないだろう。どころか女性陣にも綺麗だ、羨ましいと言われてる様だし、普段のゆるふわ感も相まってそれもまた愛嬌として受け入れられてしまう。
取り敢えずスルーして、ステーキを食べ終えると山菜類のプレート。添えられていた串を使って食べる。じーっ。視線を感じる。
「あの……」「?食べづらいです?」
「そりゃまあ…」「朝もみんなの顔を見てたらみんな恥ずかしがってましたけど」「だろうね」
仕方ないですね~と言いつつ彼女がくるりと後ろを向く。
「みんな私の顔が帝国の数限りない目の保養、って言いつつ私がみんなの顔見たら嫌がるんですよね」「あはは……でも食べてる間にガン見されたら流石にね」「私は作った料理、美味しいのかな~ってちゃんと観察してるだけなのに」むすーっと怒りながら言う葵。
勝手に監視下から脱走する割に、こういう他人の気持ちを慮る事は出来るらしい。……本当に何と言うか、手のかかる気まぐれで自由奔放な猫の様だ。
くすりと笑いつつ山菜類も平らげてクッキーに手を伸ばす。
(久しぶりだなあ、こういう昔みたいな本格的なの)
サクサクと意外と美味しいクッキーを頬張る。全部食べ終える頃には、今度は葵がウトウト…とうつらうつらしている。
「あのさ、葵?」少し肩をトントン、と叩く!フニァッ!と猫が威嚇する声を出して彼女がこちらに向き直る。……やっぱり自分が寝てる間に起きて調理を手伝いに行ったのだろう。
「お~流石元自衛隊さんですな~。食べるの早いです~」
「あはは、そうかな…?あんまり言われた事ないけど」「?他の人とご飯しないんです?」
「そりゃ昔…自衛隊に居た時は食堂とかでしてたかな。今は殆ど一緒には食べないよ」
