
第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1

「ありがとう……でも監視の目を潜るのは…」
「ご飯手伝っただけだし、皆さん居ましたので大丈夫ですよ~。初回で料理出来ないフリしてたのバレて無くて良かったです~」サラッととんでもない事を言う。
「大丈夫では無いからね…?あと僕にバラしてるんだけど」「どうせもう本性出したから今更ええんやで!!」謎関西弁。
「一度やったら二度目以降は一緒ですよ」
「それは殺人鬼の理論だね」
突っ込みつつ、取り敢えず食事の袋を開ける。……確かに普段のご飯より丁寧に捌かれたお肉だ。いつもはざっくり切って串刺しにし、少しずつ回転させながら火で炙るようにしている。
きちんと1口サイズにスライスしてあって食べやすそうだ。ここでの調理器具は石器…具体的には黒曜石とかの類いしかないので、包丁とは扱いが違う。それで初回でここまで綺麗に扱えるものなのだろうか。
「それは鹿肉のステーキ。こっちもどうぞ~羽京君」更に差し出されたのは山菜類……キノコ類が木の皿の上にご丁寧に何処かの有名シェフかの如く並べられている。
「これは…」「焼きキノコと山芋の石蒸し焼き
~カリッとドングリを添えて~」「そんな本格的な料理名を聞いた訳じゃないからね?」
困惑しながら受け取る。確かに普段より美味しそうになる様、見栄えよくキノコと山芋が並べてある。ここまでする人は基本居ないし、杠も手先は器用だがこんな芸術的なのはやっていない。確かにみんな喜ぶだろう……
いや、待って。
「僕の分も取って来たんだよね?」「?ふぁい」
「なんて言ったの…?」「羽京君と一緒に食べるので下さいって言ったら、皆ニヤニヤしてました。
何故か二人分とは思えないくらい多めに渡されたんですけど……羽京君、元自衛隊なんでよく食べるんですね~」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!羽京は心の中で叫んだ。絶対に勘違いされてる!!
自分はあまり、大勢の人とワイワイ食事はしない。
自衛隊時代は先輩に誘われたりするし、学生時代は男友達と食事くらいはしていた。
が、ここストーンワールドに於いては、自分は聴力担当の見回りーー警備員の様な物なので、基本ご飯は受け取るだけ受け取って、森でひっそり食べてから肉に刺してる串等の類いを後で返したりする。
……その自分が、誰かと一緒に食べると言われれば確かにみんな『そういう』親密な関係だと思うだろう。参ったな……。
