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僕と彼女の声帯心理戦争

第3章 【第1章】嵐の前の静けさ Day1


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初ライブの夜。

葵が就寝後、彼女の起床前に羽京はさっさと自身も睡眠を取る。勿論きちんとしたベッドでは無く、野外で野宿だ。だが海上自衛隊の元隊員の体力は伊達では無い。翌日の彼女の起床前には既に起きていた。

…のだが。何時もより彼女の起床が遅い。眠い訳では無いのでいいが…
あまりにも出てこなさ過ぎた。この一帯には、実は彼女の分しか洞穴を開けていない。それは彼女が監視対象であり、暫く様子を見てから寝所を移す為だ。羽京は彼女の動向を見張っては、彼女の就寝と共に眠る。それが彼の最近のルーティンだった。

やがて時間が立ち、お昼の時間である。ぐぅうう、とお腹が微かに鳴った。しまったと羽京は反射的に思った。
彼女は自分が見た限りでは、この世界でも夜遅くに眠らない。夜ご飯が終わればささっと寝所に戻る。きっちりと睡眠時間が決まっている。自衛隊時代、分単位で活動していた自分が1回計測した限りでは、大体8時間程度の睡眠。

それが2週間続いていた事により、羽京も自然と彼女の大体の起床時刻を予想して起きていた。その時計が狂ったのだ。彼女に合わせていたせいで手元に食糧が無かった。

立ち上がるとひっ、と声を出しそうになる。
目の前の岩の陰からじーーっとこちらを見ている葵が居た。……立ち上がらないと見えないくらいに高い岩だからか、どうも彼女の目隠しになっていた様だ。

「みふはっはー、おひゃよ」
しかも何か食べてる。朝ご飯だろうか?いつの間にと思ったが、彼女が気配を消すのは正直もうこの際置いておくことにした。監視の目を思いっきり掻い潜っている、という点ではとてもそのままにはしておけないが……。

「あはは、これは驚いたな…、君だと僕が監視する意味が無さそうだ」「もぐもぐ…。はい、どぞ」「え」「羽京君の分のご飯。皆さんと一緒に作ったんです~」

へへ~とほんわかした笑顔で笑うが……羽京は監視役として見ていたから知っている。来たばかりの頃に調理用の石器ナイフをスポーンと飛ばして、木の幹にぶっ刺して周囲を唖然とさせていた姿を。

「えっと……」「あの時は来たばかりで緊張してました、今度から手伝いますって言ってご飯作るの手伝ったんです。手先器用なのは杠ちゃんとかしか居ないらしいですね。凄く喜んでましたー」
羽京用の食事を右手にぶら下げ葵が言う。
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