第5章 すてきなあくむ
「うわ!」
私が降りると近くにいたユキワラシが
こちらに雪玉を放ってきて後ずさる。
が、それは私には当たらなかった。
私の影に向けられたものだったのだ。
「ゲ!」
ゲンガーが雪玉に反応して頭を出す。
ユキワラシはキャッキャと笑いながら
みんなで雪玉をゲンガーに投げ始めた。
ゲンガーは影に引っ込んだかと思うと
色んなユキワラシの背後に現れては
雪玉を避けて遊んでいるようだった。
思わずカメラを構えようとし、ハッとする。
私は今荷物を持っていないんだった。
しかし普通のゲンガーは知恵が働き誰かを
困らせるようなイタズラを好むらしいが、
出掛けたがる私を連れ出したり、
生存ピラミッドの低い場所にいるだろう
ユキワラシたちと遊んでみたり……。
このゲンガーは少し変わっている。
見れば雪玉が当たったことで
一匹がゴーストダイブに引きずり込まれ、
ワーッとユキワラシたちが散らばる。
今度は鬼ごっこが始まったらしい。