第5章 すてきなあくむ
気がつけばレナはハナレ洞窟にいた。
いつからどうやってここに来たのか。
研究所からは100km以上離れていて
間には別の島や海がある。
海は流れが複雑で沢山の船が沈んで
ここの島にくるのは……
「ゲン」
「……ゲンガー」
目の前には1匹のゲンガーがいる。
真っ黒なゲンガーと夜空、
真っ白な誰も踏んでいない雪原。
「あなたが、私を連れてきたの?」
ゲンガーはニンマリした顔のまま
何も答えずにレナを見つめている。
それでも、なんとなくそうなのだろうと
彼女には思えた。
冷えきった空気にクシャミをすると
ゲンガーがわずかにたじろぐ。
温暖なフロレオ島に比べ、
夜のデュラスの極寒は生身の人間は
けして生きていけない環境だった。
空気よりも冷たい氷のようなゲンガーの
指先が遠慮がちに頬に触れた。すると、