第13章 表裏一体(下)
「本当にやったの!?」
「…………」
ハナレ洞窟に下卑た笑い声が響く。
自分がされたくなかった事なのだから、
それをされた気持ちは分かっていた。
もうレナは俺を許してくれないだろう。
騙されたのだ、弱味につけこまれた。
「もしもーし?重症ねえ!
弱って消えちゃうんじゃない?
ゲンガーって死ねるのか知らないけど!」
「…………」
返事をする気力もない。その後も
メスゲンガーが何事か喚いていたが
意味がないと悟ったのか姿をけした。
洞窟からは三日月が見えている。
目をつぶればすぐ側にレナが
いるように声を思い出せた。
元の日常に戻るだけの筈が
大きく何かを失った気がする。
何も変わっていないのに。