第4章 呪術高専①
二人で医務室の前まで来た。
「じゃあ」
「伏黒くんは入らないの?」
「関係ないからな」
伏黒はそっけなくそのまま背を向けると、寮の方に歩いて行く。
鈴がノックをしてドアを開けると中では五条と新田が待っていた。
「よく来たね、鈴。京都のお土産食べる?」
テーブルの上には生八ツ橋や抹茶ラングドシャが並べられて、五条はのほほんと緑茶を飲んでいた。すっかり喫茶室と化している。
「うわっ、このお茶苦いよ、新田」
「そうっスか?こんなもんですよ」
用意された湯呑みは二つ。新田が一つにだけお茶を入れる。
「そういや、恵は?」
「どこか行きましたけど…」
「しょうがないなー、まぁお年頃だし」
やたら親しげな五条に伏黒との話を聞いてみたくなったところで、やっと本題のようだ。
「鈴ね、だいぶ体調良いみたいだから、とりあえず新田のアパートに移ってもらおうと思ってる。ここから目と鼻の先だし、平日は新田と一緒に出勤して、事情聴取の続き。
それでいい?」
「遠慮しなくていいっスよ!弟の世話もしてたんで!」
鈴はこくん、と頷く。一人では何もわからないままだから、そうする他ない。
「お世話になります」
「わかんないことあったら、遠慮なく聞いてね。恵に」
࿐༅
伏黒は部屋に戻るとベッドに突っ伏すように横になった。
鈴と距離が近くなるごとに迷いが生じる。
五条の六眼ならどんな術式かわかるというが、安易に教えてはくれないだろう。
鈴とは生きる世界が違うはずだった。
蠅頭を見ただけで怯える鈴に呪術師の才能があるとは思えないし、なるべくこちら側のことに深入りしてほしくない。
彼女の幸せのために。