第3章 不平等な現実
ばっちり伏黒くんと目が合った。途端に恥ずかしさが全身を駆け巡る。
(……ッ!!)
だって私、お風呂上がりで部屋着じゃん!ノーブラだし!すっぴんだし!いや、学校の時もすっぴんだったけども!
こんな姿を好きな人に見られるなんて!!!
軽くパニックに陥って、頭がくらくらする。いや本当にめまいがする。ふーっと足の力が抜けて、意識が遠のいて立っていられなくなる。
「蓮見?お前、なんか顔色が……っ!」
伏黒が言い切る前に鈴は膝から崩れ落ちる。気を失って上半身が床に叩きつけられる前になんとかキャッチした。ほっと息を吐くが、見ていただけの五条に「恵ちゃん、男前!」と冷やかされ、ブチ切れそうだ。
「伏黒、ベッドに運んでやって」
「…はい」
気を失った鈴を抱え直す。顔色は真っ白で、手足は細すぎて弱々しくこんなんで大丈夫かと心配になる。
伏黒が鈴をベッドに寝かした途端、ぱちっと目が開いた。目前には伏黒の顔。
(きゃあぁぁ!近い!!)
真っ白だったり、急に赤くなったりする鈴の顔色。尋常じゃない。どこか悪いのではなかろうか。
「…蓮見、本当に大丈夫か?今、家入さんを…」
「だっ、大丈夫です!私、あの…」
点滴を準備している家入を呼ぼうとする伏黒の服の裾を鈴はくいと引っ張った。
「…何?」
「…あの、伏黒くんって何者?」
その問いにどう答えればいいのだろう。
呪術師だと言えば、蓮見はどんな顔をするだろう。
どうせ蓮見はじきにここを出て、一般人の生活に戻るのだ。巻き込むわけにはいかないと思う。
不安そうな翡翠色の瞳。どう答えれば、蓮見はーー。
「そういうことはね、あのぼんくらに説明させろ。伏黒が悩むことじゃない」
点滴を片手にコツコツと足音を立てながら入ってきた家入がパーテーションの外に聞こえるように言い放つ。
「血圧も脈も問題ないね。今日は急に動き過ぎたから、少し休みなさい」
鈴は何か言いたげにしながらも家入に言われた通り、布団にくるまって目を閉じて、夢の中に落ちていった。