第3章 不平等な現実
その日は妙な夢を見た。
高専の制服を着て、他の同級生と一緒に渋谷のスクランブル交差点に立っている。
「伏黒、伏黒!本当にこっちで合ってんのか?」
「渋谷なんかに呪霊がいるの?私、買い物したいから二人とも付き合ってよ」
「それ、職務放棄だぞ。五条先生が言うんだ。合ってるだろ、たぶん」
信号が青になって、大勢の人の流れに乗って歩き出す。同級生二人は何やかんや言い争いをしているが、まるで漫才のようだ。そのとき、高校生の男女とすれ違ってハッと振り返った。
ふわりとカールした薄い茶髪、翡翠色の瞳。メガネを外してコンタクトにしているがすぐにわかった。
(…蓮見…)
彼女は見知らぬ男と手を繋いで、幸せそうに談笑していた。まるでその男しか目に入っていないかのようだ。
ズシンと心の奥の方が重くなる。今まで気づかないように奥底に秘めていた感情。
「伏黒?どした?知り合い?」
同級生の声で我に返る。そりゃそうだ、元々生きる世界が違ったんだから仕方ない。
だけど、おれは自分で思っていたよりあいつのことを。
(これでよかったんだ…)
そう、きっと正しいのはこんな未来だったはずーー。