第3章 不平等な現実
2017年12月24日 クリスマス・イブ
呪詛師夏油傑による百鬼夜行当日だが非術師が知る由もなく、ただ東京新宿方面が電気系統のトラブルにより、立ち入り禁止となっていることだけがニュースで流れていた。
「お父さんも今日は早く帰ってくるって言ってたから、皆で夕食食べましょうね」
去年は外食だったけれど、今年は母が腕によりをかけて作った料理がテーブルに並ぶ。クリスマスケーキも鈴と母で手作りした。
鈴も夕食の準備を手伝う中、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「お届け物です。印鑑かサインをお願いします」
宅配員から鈴は荷物を受け取る。思いの外、軽い。差出人を見ると叔父からだった。
(なんか……、これ嫌な感じがする。叔父さんからだからかなぁ)
リビングの一角に荷物を置き、母に報告する。
「お母さん、叔父さんから荷物だよ」
「あら珍しいわね。お歳暮かしら?お父さんに聞いてから開けるわね」
祖父の遺産の件で父と叔父はまだ揉めていた。遺言書には半分は祖父が勤めた病院に寄付すること、残り半分を兄弟二人で平等に分けることが記されていた。
しかし叔父は遺言書が偽物だと言い張り、全遺産の半分が自分のものだと主張していた。現在、弁護士を入れて話し合っているが、裁判に発展するかもしれないと鈴は聞いている。
しばらくして、父も仕事から帰ってきた。
その日は家族水いらずで過ごせたすごく楽しい、最後の夜だった。