第7章 望まれた悪夢
長い長い悪夢だった。
「みんなに、話したいことがあるんです」
男士たちに、そう呼びかける。
少し離れたところに立つ鶯丸と、ふと目があった。
本丸じゅうの男士が数限りなくゼロ距離をとってくる中、鶯丸だけは一定の距離を保っているように感じた。
自分はよそ者だからだと。そんな遠慮でもしているのだろう。
安堵と罪悪感が混在する鶯丸の瞳は、ひたすらに優しい。
彼は今も、“悪夢”の中なのだろうか?
「なんでも話してください主様!」
虎とともにびえびえと泣きに泣きながら、五虎退が声を上げた。他の男士も頷きを返してくる。
「何をしましょうか? 家臣の手打ち? 寺社の焼き討ち? 御随意にどうぞ」
もう幾度も聞いたセリフを長谷部が返してきた。相変わらず物騒なセリフだなと苦笑を覚えながらも、ふと気づく。
そうか。
これは多分、戦だ。
「……その前に」
みんなの顔を見回す。きっと鶯丸は断らないだろうけど、彼に一度確認しなくては。
今までのことを明かす、その前に。
「鶯丸と二人にしてもらっていいですか?」
みんなが一瞬目をぱちくりさせたあと、一斉にギロッと鶯丸を睨みつける。
「ん?」
けれど鶯丸は、キョトンとした涼しい顔で、小首をかしげたのだった。