第6章 初期化された祈り
陶器が砕け散る音が、意識を現実に呼び戻した。
「……どうしたんだ?」
鶯丸の問いに答えられない。
声が出ないからだ。わなわなと四肢が震える。無意識のうちに手で顔を覆っていた。
もう声は聞こえなかった。
その必要がなくなったからだろう。
自分は、“思い出した”のだから。
なおも鶯丸がなにか言葉をかけてきた。
心配そうな声と表情に、なにかを返した気がする。
鶯丸の話を全て聞き終えなければ。
そんな強迫観念じみた衝動が口を動かしていた。
顔を上げる。彼の話を全て聞かなければならない。
もはや、他人事ではないのだ。
朦朧とする意識のなか、鶯丸が再び話をし始めたのが聞こえた。
断片的な知覚情報が、脳の表面をころげ落ちていく。
何が話されているのかわからない。
惑乱した頭に、これ以上情報が入っていくのはキャパシティーオーバーだった。
「――」
なにかを言われた気がした。
けれどそのまま、意識を手放した。