第6章 初期化された祈り
審神者たちの元に戻った頃には、陽が傾きかけていた。
戻ってきた鶯丸と前田を確認すると、審神者二人はホッと胸を撫でおろしたように出迎えてくれた。
彼女がはい、と前田に紙袋を手渡す。
前田は予想していなかったらしい、戸惑ったようにそれを受けとった。
彼女の顔を一度うかがって、おずおずと中身をとりだす。
現れた“それ”を目にし、前田の瞳が揺らいだ。
「さっきじっと見てたわよね。ここの美味しいって評判なの」
彼女は「頑張ってる前田にご褒美」と続けて、にっこり笑んだ。
見れば、前田がとりだしたのは、色とりどりのまんじゅう(?)がつまった木箱だった。
一口サイズで、それぞれ草花や動物を模してある。
手をかけられ繊細に施された細工は、芸術品と呼べる域だ。
材料は餡だろうか? 見たことのない甘味に、思わず目を奪われる。
前田は身体をかたまらせ、言葉もなくしていた。