第3章 特別演練
気がつくと、夕陽が地平線に沈んでいた。本丸は藍色の宵闇に包まれ、一日が終わろうとしていた。
鶯丸は、夕御飯を準備する面々の働きを眺めながら、広間で茶をすすった(顕現されて日が浅いとのことから、まだ当番を割り当てられていない)。
食欲を刺激する匂いと、刀剣たちの喧騒があたりに満ちていた。慣れ親しんだ風景に、鶯丸は自らの状況をうっかり忘れそうになる。
今日わかったこと。それらを思い浮かべてみる。
審神者はまだ新人の部類で、歴は月を片手に数えるほどであった。
齢は成人したばかりだという。
どことなく頼りなげだが、誠実で万事一生懸命な姿は、男士たちから信頼と親愛を勝ち得ていた。
彼のような新人を支援するため、政府からとある支給品があったという。
審神者から見せてもらったが、見た目は単なる絵馬だった。
これを鍛刀の際使うことによって、入手難易度の高い刀剣を鍛刀できるらしい。
そして先週鍛刀されたのが、“鶯丸”だった。
この本丸は総勢20人に満たない規模であり、鶯丸は菊透かし――レア4の刀剣の最初の一人になった、とのことだった。