第13章 前哨戦
女がそう言い終えると同時に、ジジ、という電子的なノイズを唸らせて、何もなかった空間に青白いゲートが現れる。普段鶯丸が目にするものより、一層眩しく感じた。
この先に、“主”が――
「これを向こうの鶯丸に渡し、『主の置手紙だ』と伝えて」
脈絡なく差し出される。女の手にあったのは、小指サイズほどのメモリチップだった。訝りつつそれを受け取る。
向こうの本丸の鶯丸、か。もう何が何だかわからないが、それは今に始まったことではない。
「……お前は、政府の人間ではないのか?」
何から尋ねればいいのかわからず、そんな問いが転がり出る。
目の前に突如として現れた、政府の人間らしき二人。
彼らは、鶯丸たちを不法侵入者として捕らえもしない。それに、鶯丸たちが直面している問題――“主”が消えたことを知っている。その上で、鶯丸たちが主を奪還するサポート(?)までしてきた。
今さら疑うわけではない。
鶯丸たちには、彼らに従うという選択肢以外、残されていない。
それでも、疑問だらけの脳内を、少しでも晴れさせたかった。
鶯丸の顔によほど困惑が出ていたのだろうか。
女はくすっと吹き出すように笑って、
「政府も一枚岩じゃないってことよ」
そう言って、ニヤリと口の端を吊り上げた。