第13章 前哨戦
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無菌室。
いつ来ても、そんな印象を覚える。
真っ白な壁と天井に、真っ白なベッド。その周りを多くの機械が囲んでいる。室内には、生命維持装置が発するごく小さな電子音と、人工呼吸器の音が響いていた。
鶯丸はベッドのそばに歩み寄り、静かに眠る人物を見下ろす。
呼吸すら自力ではできなくなった彼女には、人工呼吸器が取り付けられている。かつて何度も鶯丸の名を呼んだ唇は、今は何も言わず、その色もいつかの桜色を失っていた。
閉じた瞼にかかる髪の毛に、指先でゆっくりと触れる。
「少し時間があいてすまなかった、主」
いつものように話しかける。当然、返事はない。
「前例のないパターンが見つかったんだ。記憶を取り戻しても誰も傷つけることなく、ただ消えることを選んだ。まるで浄化されたみたいに……。今度こそ、死なせない」
言いながら、“彼女”の姿を思い出していた。