第12章 侵入作戦
「……すまん、話が見えないんだが、お前たちは――」
「僕は“主君の初鍛刀”である前田です。こちらの和泉守兼定さんは、政府所属の刀剣で、協力者です」
「協力っつーか、あいつに脅され――」
「あの方を悪く言うのはやめてください」
「わーったわーった!」
怖い顔をする前田を諫める和泉守。これは、完全に前田が上だな。
聞けば、和泉守は前田の審神者と以前から知り合いだったらしい。とある事件で彼女に借りができた和泉守は、こうして彼女の頼みを聞くことがあるという。
和泉守いわく、「断った方がよっぽどこええ目に遭うわ」とのこと。
彼からつけられたこの記章は、見た目だけでなく、セキュリティシステムをパスする装置の役割も果たしているらしい。西棟の職員、もといセキュリティを騙すには、必要不可欠なアイテムだという。
ただし、使用は西棟に限定されており、西棟外に持ち出そうとすると、セキュリティシステムにひっかかるそうだ。道理で、西棟までは自力で来なければならなかったわけか。
とはいえ、前田と鶯丸が付けている記章は偽造品である。
前田の審神者の友人に、こういった偽造技術に長けた者がおり、依頼して超特急で作ってもらったものらしい。
「私は私のやり方で助力させていただきます」
とメッセージがあったが、こういうことか。
確かあの審神者、暗号技術に長けた友人もいなかったか。交友関係どうなっているんだ。
「ここは資料室といって、政府の機密書類が収められています。鶯丸さんを待つ間、主君につながるものがないか探していました」
前田はそう言って、一度口をきった。何かを言い淀むように、口をつぐむ。
その視線が、鶯丸が落とした冊子を捉えた。彼の幼い顔が、険しい表情に歪む。
その動作で、前田が何を言おうとしているのかわかってしまった。
「主君は、その実験に巻き込まれているかもしれません」