第68章 諦め
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「杏寿郎さんっ!」
気づくと私は駆け出していた。
ずっと先にいるが、後ろ姿で分かる。
優しくて、逞しく、頼もしい。
眩しいくらいに周りを照らしてくれる、太陽の瞳をもった
愛する人。
私は早く愛する人の温もりを感じたくて、息を切らしながら走る。
もう少し。
もう少し。
でも、もう少しから距離が縮まらない。
「杏寿…郎…さ…」
体が重い。
足が動かない。
どうして…?
私は足元を見る。
「……っ!!!!!」
私の足を掴む2つの手。
ニヤリと笑うその男は、坂本和誓と松本祐一。
和「本当に幸せになれるとでも思ってんのか?」
祐「泰葉、泰葉…」
「はな…して、よ…」
泰葉が足を振るい、男たちの手を払おうとしてもグッと離さない。
慌てて前を見ると、先ほどまで見えていた杏寿郎の背中は無かった。
和「お前はずっと俺に苦しめられるんだよ。
傷モンのお前が、由緒正しい家に嫁ぐ?笑わせるな。」
祐「泰葉…、君は僕のものだからね。」