第67章 後悔 ❇︎
杏「入るぞ。」
杏寿郎が室内に入ると、泰葉を見ながら絶句するしのぶとアオイ。
杏「どうした?」
杏寿郎が覗き込むと、泰葉の浴衣の合わせを開いた状態だった。
そして身体には無数の赤い印。
し「…これ、あの男達ですか?」
杏「それは…」
「俺だ。」
杏寿郎の言葉に、しのぶとアオイは目を見開き振り返る。
アオイの顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、動けなくなってしまった。
杏「正しくは俺が上塗りをした…というべきか。
男が付けた上に、俺が付けたんだ。」
し「そう…ですか。」
泰葉が眠っている時間は長くて1日。
その間に消えていてくれれば良いが、そうはいかないだろう。
これを見た時に、どう思うのだろうか…。
し「もう、煉獄さんでは…治せなくなったんですね。」
しのぶが、泰葉の手首についた縛られていた痕や、頬にかすかについた擦り傷を撫でる。
杏「あぁ、そのようだ。俺には何の力もない。」
し「いえ、それが普通なのです。
人間は傷を負ったら、なかなか治らない。失くなった手足が戻ることはない…。
彼女の力はありがたすぎました。」
しかし、よりによって何故今に消えるのか。
そして、泰葉には少なからず体調に変化があった。
どうして俺はもっと警戒しなかったのか。
どうして首の後ろの痕がちゃんと消えたか、確認しなかったのか。
早く力の消失に気づいていれば、泰葉は出かけることを辞めたのでは…。
店で泰葉に気づいた時、無理にでも帰らせていれば…。
【後悔後に立たず】
杏寿郎は拳を握りしめた。