第65章 嘘
「今度の日曜日ですか?」
泰葉が驚いたように杏寿郎を見る。
その訳は、杏寿郎がピンポイントで日曜日の予定を聞いてきたからだ。
杏「あぁ。実は先程不死川達が来たのは、日曜に一緒に出ないかと誘われてな。」
あ、それで私を1人にしてしまっても良いかということか…。
泰葉は、内心とてもドキドキしていた。
それを悟られないように話を続ける。
「そうだったのね!実は私も日曜日予定ができて。
今日、偶然女学校の時の友人に会った時に、日曜日出かけないかって誘われたところなの。」
杏「…そうか!
…それは、ちなみにどこに行く予定だろうか。」
この答えはどうしたものか。
杏寿郎も万が一街へ行くと言ったら…?
杏寿郎のことだ。もしかしたら泰葉を探すかもしれない。
しかも、一緒にいるのが天元、実弥、義勇なら尚のこと…。
「ま、まだ決まってないのだけど…。
杏寿郎さんは?どこに行くの?」
なんとなく濁し、杏寿郎の予定に探りを入れる。
杏「うーん、まずは宇髄の家だ。それから多分街外れに行くんだろう。」
「へぇ、街外れまで…。そこに何か?」
杏「あ、まぁな。なんでも不死川の頼まれ事があるらしくてな!その手助けをしに行くんだ!」
頼まれ事。
それは何かを聞いたけれど、それは不死川しか分からないんだ、とこちらも濁される。
いつもハッキリしている杏寿郎にしては珍しい。
「そうなのね。
私もまた詳しく決まったら伝えるようにするわね。多分街を歩くんだと思うけれど。」
杏「そうか!あぁ、構わない。街を歩くだけならば。」
「えっ…?」
杏「いや、気にしないでくれ!」
杏寿郎はそのまま居間へと戻って行ってしまった。
(杏寿郎さん、私の嘘に気付いてる?いや、そんなはず…。)
しかし、杏寿郎の会話も怪しかった…。
泰葉はうーん、と顎に手を当てて首を傾げた。