第60章 君を傷つけない為に ❇︎
だが、泰葉は杏寿郎の手の動きがおかしい事に気づく。
襖の向こうの人物と話しながらも、杏寿郎の指は乳房の局面をツー…と撫で、キュッと蕾を積んできたのだ。
「んうっ…!!」
思わず出てしまった声。
杏寿郎の手はまだ口を塞いでいる。
『は、はいぃ!では、お待ちいた…します!』
杏「あぁ。しかし、襖は開けないでてもらえるか。
可愛い妻が寝てしまってな。」
泰葉は眠ってなどいない。
むしろ蕾を積まれたり、昂りを擦り付けられたりで声を堪えるのに必死だった。
(杏寿郎さん、やめて!声が…!!)
そう目で訴えて首を振るも、杏寿郎はニッと口角を上げたまま。
あろうことか、ニチッと音を立てて昂りの先を密口へと充てがう。
(う、嘘…!!)
この部屋のすぐ外に人がいる状態で、挿れようとしているのか。
杏寿郎らしからぬ行動に目を見開く。
しかし、誰かに聞かれてしまうかもしれないという、羞恥心と背徳感で身体が高揚してきているようにも感じる。
杏「…まぁ、君が本当に店の者ならな。
違うのなら、今すぐ立ち去ってくれないか!!」
「え…?」
杏寿郎がそう伝えると、慌てた様子でバタバタと立ち去っていく音が聞こえる。
杏「おそらく今のは、店の人じゃない。興味本位で覗きに来たか…」
そう言いながら、杏寿郎の硬さを持った昂りがぐんと密口を押し広げる。
「あんっ…!!」
杏「泰葉の、この可愛らしい声を盗み聞きしに来たか…だろう。」
「んっ、あっ…そんな、人の前で…」
声を出させるようなことをしていたのか。
杏「ん、いいや。聞かせるはず、ないだろ。少し、意地悪したく、なっただけだ…!」
「ぁあっ、ひどい…!!」
杏「ふふっ、すまん。」
そうして、段々と激しくなる律動に、泰葉が気を遣ったのは4回か、5回か…。
記憶になどなかった。
なんせ、気付いたら夜が明けていたのだから。