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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第59章 あなたは誰?



杏「泰葉さん、何か見たいものはあるか?」


街を歩きながら、杏寿郎は泰葉に問いかける。
このまま2人で少し買い物をして、泰葉に食べたいものがあったらそれを食べ、帰りに高木屋の蕎麦屋に寄って挨拶をして帰る。


杏寿郎の中ではそんな予定が組み立てられていた。



そして、できれば夕飯前あたりに、少し景色のいい場所に行き、用意した贈り物を渡したい。




そんな事を考えていた。




しかし、泰葉の口から出てくるのは…



「んー…そうね。千寿郎くんに何か本を買ってあげたいし、槇寿郎様に新しい湯呑みを…あと、瑠火様の仏壇に花を買って…」




「待て待て…」



杏寿郎は慌てて泰葉の言葉を遮る。
家族想いでいてくれるのは大変ありがたいが、泰葉の口から出てくるのは土産ばかり。



杏「今日は逢瀬だぞ?土産はいらんだろう。」

「でも、せっかく街に…」

杏「もういつでも街には来れる。千達に欲しいものがあるなら、今度はみんなで来ればいい。今は泰葉さんと俺だけを考えていて欲しい。」


そう言って、杏寿郎は握った手を持ち上げ、泰葉の手の甲に口付けた。



「…っ、ここは外よ!」

杏「うむ…。もう少し、素直になってもらいたいものだな。」



恋人らしい事をすれば照れ隠しをする泰葉に、少し困ったように笑う杏寿郎。


素直になりたいのは泰葉も同じく。



(こんなんじゃ可愛気もない…。)




もう少し素直で可愛気のある女子になりたいものだ。
これでは、杏寿郎にいつかは愛想尽かされてしまうのではないか…。


そんな小さな不安が、泰葉の胸の中で燻る。



(蜜璃ちゃん達は、可愛らしくいられるのだろうな…。)




杏「…だが、そんな泰葉さんも俺は好きだ。そして、俺との生活で互いにどう変わるか。それが楽しみだな。」




心の内を読んだのか、杏寿郎は泰葉の手を優しく握り直す。


「ほんと?なら、良かった。」



もしこれが、気遣っての言葉としても、今の泰葉には嬉しかったし、安堵できるものだった。
そうしてくれるのも、杏寿郎だからだろうと心から感謝する。




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