第55章 愛の形 ❇︎
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「杏寿郎さん、最近はよく眠れるようになった?」
杏「あぁ!最近は夢を見ることなく、夜に眠る事にも慣れてきたようだ。」
最近は、確かに魘されている様子もない。
これは杏寿郎の性格もあって、この期間での立ち直りを見せたのではないかと思う。
きっと、他の人ならばもう少し引きずってしまってもおかしくない。
ただ、要の羽音には敏感なので、要にも夜にはぐっすり眠ってもらうようにしたいところだが。
「そっか、良かった。」
杏「迷惑をかけたな…」
「言ったでしょ。私も一緒に背負うって。」
杏「む、…ありがとう。」
布団の上に寝転びながら杏寿郎は泰葉の張り付いた前髪を梳く。
「杏寿郎さんの髪、ここだけ長い。」
杏寿郎の顔の横の部分だけ、以前の髪のまま。
後ろが短くなったから、そこが長く見える。
杏「ここも切ればよかったか?」
「ううん、これがなくなったら、何となく想像できない。」
ふふっと笑って泰葉の人差し指にくるくると巻きつける。
杏「そんな可愛い事をしていると、また喰ってしまいたくなるが?」
杏寿郎は昂りを取り戻したモノをグッと泰葉の太ももに押し当てる。
「へっ⁉︎も、もう⁉︎」
杏「もうも何も。10分は休んだぞ。」
「10分って…10分しか休んでないじゃないっ、ま、まだ私が…」
杏「あとで纏まった休みを取るといい。さ、もう一度…」
「あっ、ちょっと、や…っ」
杏「本当に嫌ならば全力で。嫌じゃないなら?」
「…も、もっと…」
杏「うむ、いい子だ!」
夏の終わり秋の夜長に入りかけた季節に、2人の愛の形はゆっくりと紡がれていった。