第53章 予想外
ポォー!!
汽笛を鳴らし、列車が駅へと入ってくる。
千「この入ってくる時、本当に迫力があります!!」
また興奮し始めた千寿郎は列車の顔を目に焼き付けるように、色んな角度から観察していた。
智「あはは、やっぱり男の子は列車を見るとこうなるよね!」
にこやかに千寿郎を見る智幸。
『泰葉ちゃん達も気をつけてな。
また来た時には顔を見せておくれ。』
杏「もしよろしければ、祝言の際にもいらして下さい!」
浩「ば!しゅ、祝言に⁉︎」
杏「浩介殿に似た同僚もいるんです!その彼も水の呼吸の使い手だ!話が合うかもしれん!」
好きな女性が違う男と結婚する姿を誰が見たいか!と、思う気持ちと、泰葉の白無垢はさぞ綺麗だろうと見たい気持ちが浩介の中でせめぎ合う。
『そうかそうか、それはぜひ行ってみたいものだ。』
浩「じ、祖父さんが行きたいっていうなら、一緒に行ってやるさ。」
素直になりきれない浩介をくくっと笑う泰葉。
「楽しみにしているわ。日程などが分かり次第、手紙を送ります。」
泰葉がニッコリ笑うと、浩介の中でやっぱり見たいという気持ちが圧倒的に勝った。
浩「あぁ。楽しみにしてる。」
浩介も微笑んだ時、槇寿郎の声がした。
槇「2人とも!そろそろ時間だ!乗り込むぞ!」
『はぁい!』
元気よく返事をし、智幸、浩介、お爺さんと握手を交わし、列車に乗り込んでいった。
智「気をつけてー!」
そう手を振る智幸達に手を振りかえし、ガッタン、ガッタンとゆっくり列車は走り出した。
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智「浩介くん、ありがとな。泰葉を大切に思ってくれて。」
浩「いえ、正直残念ではありますが、相手が杏寿郎くんで良かったと思っています。…これが、運命なんですから。」
そう微笑む浩介の顔には清々しさが浮かんでいた。