第52章 恋敵
「こうちゃん、私…いくね。」
浩「あぁ、見送るよ。」
「泰葉…」
泰葉と浩介は皆の所へ戻る。
まだ額に筋を立てて微笑んでいる杏寿郎。
心なしか左眉がピクピクと動いている。
槇「杏寿郎、そんなんでは怖くて戻って来なくなるぞ。」
片眉を上げて槇寿郎は杏寿郎に忠告をする。
その言葉を聞いて杏寿郎は大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。
「お待たせしました!」
杏「うむ!話は済んだか?」
「ん!!」
小走りで杏寿郎の元に駆けてくる泰葉に声をかける。
すると、泰葉は杏寿郎にガバッと抱きついた。
杏「…泰葉…さん⁉︎こ、これは…⁉︎」
「杏寿郎さん、私…あなたが好きよ。」
杏「!!!!」
そう呟かれた杏寿郎は、不意打ちをつかれ一瞬気を失いかけた。
兄に抱きつく泰葉を見て、千寿郎は顔を赤くして慌て出す。
槇「千、多分このような姿はしょっちゅう見ることになる。
…慣れなさい。」
千「…は、はいっ」
浩介が苦笑いしながらやってきた。
浩「…だそうだ。杏寿郎くん、俺の入る隙は無かった!
これからは兄として泰葉の幸せを祈る。
だから、もし泣かせたら…分かっているよね?」
杏「もちろん!泰葉さんを悲しませたりなどしません!」
そんな2人のやりとりに、ふふっと笑い出す泰葉。
「杏寿郎さん、大変ね。私が泣いたら皆に怒られてしまうわ。
こうちゃんまで入っちゃって。」
杏「全くだ!泰葉さんの両親はもちろん、宇髄に富岡。不死川…時透に…浩介殿!これは大変だな!」
はっはっはっ!と笑う杏寿郎達の言葉に浩介は目を丸くする。
浩「お、おい!誰だその出てきた名前は?
まさか、皆泰葉のことを諦めた男達じゃないだろうな⁉︎」
杏「流石、察しが良い!ご名答だ!」
槇「杏寿郎、そこに私たちも加えておきなさい。泣かせるような真似をしたら許さんからな!」
うんうんと頷く千寿郎。
杏「よもや!家まで失ってしまう!
毛頭そのつもりはないが、肝に銘じておきます!!」
浩「泰葉を一番甘く見てたのは俺だ…」
浩介は肩を落とす。
『また大人になったのぉ。』
お爺さんは浩介に笑った。