第49章 体温 ❇︎
「…こう?痛くない?」
泰葉はゆっくりと扱きだす。
いつもなら愛しくてたまらないだろう行為に、今日はもどかしさを感じる。
「もっと、速めてくれて構わない…」
それほど杏寿郎には余裕がない。
生き物は命の危機に晒されると、生殖本能が子孫を残そうとするという。
今までも何度か衝動があったが、自慰をするか、鍛錬で紛らわすかで凌いできた。
しかし、今回はそうはいかない。
愛する女性がいて、その女性に触れることができる。
こんな感情では酷くしてしまうと思うが、どうにも鎮めることが難しそうだ。
泰葉も杏寿郎の様子がおかしいのには気づいていた。
しかし、どうしてやるべきなのかが分からない。
とりあえず、言われたように少し動きを速めてみる。
杏寿郎の眉間に皺が寄った。
(これだけじゃ刺激が足りないのかしら…)
泰葉は遊郭に攫われたとき、口での方法も教わった。
実際にしたことはないが、もしかしたら今の状態よりは良いのかもしれない。
泰葉は舌を少し出して、杏寿郎の赤く刺激を求めている先端をちろっと舐める。
「うぁ⁉︎泰葉、そこまでしなくていい!」
「でも…杏寿郎さんもしたでしょ?
気持ちよく…ない?」
不安げに杏寿郎を見上げる泰葉に、もう我慢ができない。
「いや、気持ちいい…。できれば入るところまで咥えてくれないか…」
杏寿郎が言えば泰葉は従順に従い、カプッと咥え込んだ。
入るところまでと言われて、少し角度を変えながら口内に押し込めていく。
そのぎこちなさや、口内の温かさ、柔らかさが杏寿郎を刺激する。
「あぁ、気持ちがいい。そのまま、上下に動けるか?」
泰葉は言われるまま動き出す。
しかし、やはり初めての行為にぎこちなさが拭えない。
そんな姿も愛おしいが、今は達するまでの刺激が欲しいところだ。
「泰葉、すまないっ、少し辛抱してくれ!」
杏寿郎は泰葉の後頭部を押さえ、腰を動かした。
「ん、んぐっ…ん、んっ」
泰葉の苦しそうなくぐもった声が聞こえる。
しかし、一生懸命に堪えようとしてくれているのが感じられ、それがまた愛らしかった。
自然と腰の動きが速まっていく。
「ん…出るっ、うぁっ!」
杏寿郎は泰葉の口内に精を放った。