第44章 命あってこそ
…あ、あれ?
どうしたんだろう。
何でこんなに身体に力が入らないんだろう…?
フワフワする…
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っは!!!
泰葉はバッと目を覚ます。
一瞬気絶していたようだ。
急いで身体を起こすと、所々身体が痛む。
一斉に攻撃をしかけ、優勢に立ったと思ったのも束の間
速すぎる無惨の攻撃を、全員が喰らってしまっていたのだ。
泰葉があたりを見渡すと、壁に打ち付けられていたり、血を流して倒れていたり、義勇は右腕、行冥は左足を切断されてしまっていた。
「あ、あぁ…」
泰葉の身体はガクガクと震えた。
「杏寿郎…杏寿郎さんは…」
震える身体を懸命に動かし、杏寿郎を探す。
恐らく、瞬時に泰葉を庇ったのだろう。
背中に大きな怪我を負っていた。
「う、嘘でしょ…」
杏寿郎の口元に顔を近づけると、弱々しい息を繰り返していた。
だんだんと顔色も引いていく。
「杏寿郎さん、お願い…死なないで…。」
「みんな!!!死なないで!!!
無惨に勝つんでしょう!!!命あってこそ勝ちなのよ!!!」
泰葉は大声で叫んだ。
その涙は杏寿郎の頬を濡らす。
泰葉はゆっくりと立ち上がり、無惨を睨む。
無惨の目の前には膝をつき、動けなくなったカナヲ。
カナヲに牙を剥こうとする無惨。
「やめろーーー!!!」
隠の後藤がカナヲを助けようと走り出した。
(カナヲちゃんにまで手を出したら許さない!!!!)
泰葉が走り出した時、同じくらいのスピードで向かう人影。
炭治郎だった。
泰葉は瞬時に炭治郎の動きを読み、援護するように動く。
無惨がカナヲにトドメを刺そうとした
——ヒノカミ神楽 輝輝恩光——
炭治郎は無惨の腕を斬り落とし、カナヲを抱き抱えその場を去る。
泰葉がその隙をついたように、無惨の顔面に拳を入れた。
そこからは猗窩座との戦いなど比にならないくらい、素早い動きで無惨の全身目掛け乱打した。
無惨も泰葉からこのような攻撃を受けると思っていなかったのか、なかなか反撃できずにいる。
しかし、いつまでもやられっぱなしでいるはずもなく、一本の管が鞭のように泰葉の背中を打ちつけた。
「ガハッ!!」