第36章 繋ぐべきもの ❇︎
『こんばんは、珠世さん。
物騒ですよ。夜に窓を開け放っておくのは。』
そう話すのは一羽の鴉。
どの鎹鴉よりも流暢な鴉は産屋敷耀哉の使いの者。
そして、この鴉が話しかけている一人の女。
珠世…
優秀な医者であった彼女は鬼舞辻無惨により鬼にされたが、自分で体を弄り、支配から抜け出した。
人を喰わず、少量の血を定期的に摂取することで生きている。
珠「どうして、ここがわかったのですか?」
鴉は人脈を辿ってきたという。
そして、彼女が作り出した鬼、愈史郎による術を昼間に把握。
この場所を突き止めた。
『あなた方に危害を加えるつもりはないので、安心して欲しい。』
珠「では、なんの御用でしょうか…」
不信感でいっぱいの珠世。
それもそのはず、鬼である珠世には鬼殺隊は命を狙われる存在なのだから。
『では、用件を話しましょうか。
鬼殺隊の中にも鬼の身体と薬学に精通した子がいるのですよ。
禰󠄀豆子の体の変貌と、不思議な一族の本質についても調べていただきたい。』
『鬼舞辻無惨を倒すために、協力しませんか?
産屋敷邸にいらしてください。』
人間として生きていた頃、彼女は病に倒れ死にかけていた。
そこに現れたのが鬼舞辻無惨。
彼は珠世に生き延びる手段を与える。
当時、幼い子供と夫がいたため、成長を見届けたかった。
まさか人を襲うことになろうとは思わず、無惨の提案をのんだ。
そして、見守りたかったはずの我が子と、夫を手にかけてしまったのだ。
よって、珠世は鬼舞辻無惨を酷く憎んでいる…。
(しかし、鬼である私を鬼殺隊の本拠地へ…?)
珠世はゾワっと鳥肌を立てた。