第33章 新生活
翌日。
今日は日曜日。
泰葉の蝶屋敷での仕事はお休み。
泰葉と杏寿郎は咲子の元を訪れていた。
咲「まぁまぁ、煉獄様までご丁寧に…。」
杏「いえ!今まで泰葉さんがお世話になりましたので!」
まるで保護者かのような杏寿郎に、クスクスと笑う咲子。
杏寿郎の隣で座っている泰葉にも、杏寿郎の立ち位置が分からなかった。
「なんだか、話が急展開になっちゃって…早々に出ていくようでごめんなさい。
でも、また会いに来るわね。お世話になりました。」
泰葉は三つ指をついて頭を下げる。
美しい所作に杏寿郎は見惚れていると
「うっ…うぅ…」
と、嗚咽が聞こえてきた。
泰葉と杏寿郎が前を見ると、なぜか号泣している咲子と信明。
「えっ⁉︎ど、どうして?」
咲「なんか、娘が嫁に行ってしまう感じで…」
信「杏寿郎くん、よろしく頼んだよ…!!」
「よ、嫁って…まだそんな…」
しどろもどろになりながら慌てる泰葉の横で杏寿郎も何故か涙目になっていた。
杏「はい!泰葉さんを大切にいたします!」
そう言って3人は抱き合っていた。
泰葉はこの展開はなんだろう…と他人事のように見ていた。
「それじゃ、また!」
泰葉と杏寿郎は咲子と信明に手を振り、煉獄家へと戻る。
杏「お二人は、泰葉さんを本当の娘のように思ってくれているのだな!
これからも、気にする事なく会いにいってくれて構わないから、親交を続けると良い!」
「ありがとう。本当にあのご夫婦にはお世話になってばかりなの。あの二人がいなかったら、私の生活はもっと大変だった。
感謝しても仕切れないくらい!」
笑顔でそう話す泰葉に、杏寿郎は楽しい思い出がたくさんあったのだろうなと思いを巡らせる。
杏「良い人に、良い人が集まってくると言う!
それも泰葉さんの力の一つなのだろうな!
そして、その泰葉さんが俺のところに来てくれたということは、俺の生き方も間違ってはいないのだろう!」
ニカっと笑う杏寿郎。
そうやって、自然と人のことを褒めてくれるところが本当に良いところだと思う。
そんな杏寿郎とこうしていられるのだから、泰葉も自分の生き方も間違っていなかったのだと思った。