第29章 痣
ガシッ
杏「泰葉!大丈夫か⁉︎」
杏寿郎が泰葉を受け止める。
「みんな、無事で良かった。杏寿郎さんも、怪我は?」
泰葉はそっと杏寿郎の頬に手を添える。
その手を杏寿郎は上から重ねるように握った。
杏「俺は大丈夫だ。それより今は自分を心配してくれ。」
「良かった…。羽織…ありがとう。綺麗にして返しますね。」
唇を読んで会話をしているが、聞こえないので一方的な会話になる。
杏「あぁ、そんなのは気にしなくていい。君が生きていてくれさえすれば、羽織の、汚れなど痛くもなんともない。」
そのやりとりを見て無一郎は、
あぁ、泰葉には僕じゃない…
と感じた。
無一郎は泰葉と杏寿郎の元へと歩いていく。
無「泰葉、頑張ってくれてありがとう。大好きだよ。」
泰葉の意識が朦朧としていく中、無一郎は頭を撫でて微笑んだ。
そして、泰葉は微笑んで意識を手放した。
杏「なっ…!」
無一郎の告白に目を丸くする杏寿郎。
無「だって煉獄さんがいつまでも言わないから…。
記憶を取り戻して尚、僕は泰葉が大好きです。」
「でも…泰葉は煉獄さんに任せます。
煉獄さんだから任せるんですよ。泣かせたら許しませんからね。」
少し茶目っ気を含ませながら言う無一郎だが、泰葉への気持ちは本当だ。
それは目を見れば杏寿郎にも十分すぎるほど伝わった。
杏「もちろんだ!肝に銘じよう!!」
泰葉も気を失い、全員疲弊しきっていたので
一先ず、杏寿郎達は蝶屋敷へと向かうこととした。