第21章 想い
5日後。
あれから善逸の身体は完全に治ったため、任務に復帰となった。
泰葉は善逸を玄関先で見送っていた。
善「いいやぁだぁ!!!!
いぎだぐない、いぎだぐないー!!まだ伊之助と炭治郎いるじゃん〜!!!」
善逸は泰葉に縋っていた。
「あはは、でも、私は任務に何言える力もないから、私に縋っても何もならないのよ?」
泰葉は困りながらも、抱きついて離れない善逸の頭を撫でてあげた。
善逸は上目遣いで右手を差し出した。
どうしたのかと首を傾げると
善「泰葉さんに、この間みたくチュッてしてもらえれば頑張れる!一瞬!一瞬でいいからぁぁ!!チュッてしてええぇ!!」
わぁああっと、また泰葉の腹に顔をすりつけながら、縋り付く善逸。
「あれは、そういうんじゃなくて、善逸くんの足を治そうとしただけなのよ。」
善「でもでも!今は気持ちを治して欲しいから、チュッてぇ…」
わんわん泣いていたのに、急に動かなくなる善逸。
急に具合でも悪くなったのかと、泰葉は心配して顔を覗き込もうとした。
すると、泰葉の後ろにフワッと気配がした。風に靡いて見えたのは炎の羽織。
杏「どうした!黄色い少年!
ひどく泣いているようだが?」
「れ、煉獄様?どうしてこちらに…?」
杏「いや、特に用はない!泰葉さんの顔を見にきただけだ!
…して、我妻少年!」
杏寿郎は善逸の耳の横に顔を持っていく。
「その、チュッとして、とやらは…どういうことかな?」
泰葉は何を言ったのか聞こえなかったが、途端に善逸はダラダラと冷や汗をかき始めた。
杏「さぁ!鬼は待ってはくれないぞ!体が大丈夫なら泰葉さんから離れて、移動をするといい!生きて帰ればまた会えるぞ!」
「ちょ、煉獄様⁉︎
善逸くんが尋常じゃない汗をかいているんですが⁉︎」
泰葉が心配していると、善逸はガバッと泰葉から離れて、ピシッと立つ、
善「我妻善逸、行ってまいりまぁす!」
声とは反して涙を流し、踵を返して任務へと出発した。
泰葉は、あのままでも困ったが、少しかわいそうにも思った。
杏「かわいそうか?」
「…少し。命懸けの任務ですから、あのように言ってもおかしくはないと思います。」