第19章 行き違い
歓迎会から、一週間が経つ頃。
泰葉は、蝶屋敷にいた。
理由は、血液などの提供をするため。
しかし、日によっては多忙を極める蝶屋敷の手伝いもしていた。
今日は主に手伝いの日だった。
隊士には、不思議な力があるとは話していないため、ただ手伝いに来ている一般人という事で雑用をこなしていた。
し「泰葉さん、少し休憩しましょ。」
午後3時、しのぶがお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう…。今日は中々忙しかったねぇ。」
雑用といえど、補充した包帯はすぐに無くなるし、
薬も沢山の種類があるため、間違えないようにするのも大変なのだ。
し「本当は提供だけで良かったのに、お手伝いまでしてもらってごめんね。」
「気にしないで、何もしないでいるより楽しいから!」
泰葉は仕事をまた始めようかと思ったが、鬼殺隊に協力しているので迷っていた。
何より、生活にはお金がいるのだ…。
し「あ、そういえば、泰葉さんに渡したいものがあるの。」
そう言って引き出しから封筒を取り出した。
し「お手伝いをしていただいた賃金よ。
ここ3日分のが、入っています。」
ニコッと笑って差し出すしのぶ。
泰葉は、驚いた。
「え!そんな、私受け取れないよ!
勝手に手伝わせてもらってるだけだし!」
首を振る泰葉にしのぶは、真剣な顔をした。
し「いえ、あくまでも泰葉さんは一般人なのです。
その方に手伝っていただくには賃金を支払う義務があります。
これは決して迷惑ではありません。
ここで働いている、というつもりでこれからもお願いできませんか?
そうしていただけると、私たちも助かります。
それに、今は収入もないでしょう?」
う…
たしかに収入が無いので、いつかは困ってしまう。
しかし…
「入院費とかとっていないのでしょう?
その…どこからこの賃金は…?」
しのぶは微笑んだ。
し「それは心配ないわ!
お館様から、ちゃんといただいていますから!」
泰葉は産屋敷家の財に度肝を抜かされた。