第17章 気持ち
杏「泰葉…さん?
こ、これは…」
「槇寿郎様も、千寿郎くんもお母様を失われて寂しいのは分かりました。分かりましたから…
杏寿郎さんもでしょう?
あなたはいつでも父と、弟を気にかけている。
でも、ご自分はどうなのですか?
寂しくないですか?押し殺してはいませんか?」
泰葉は杏寿郎の気持ちを勝手に決めつけているかも…と思った。
しかし、確かに彼の綺麗な目に宿る寂しさ。
父と弟を思うのとは、また違う。
自分の感情。
杏寿郎は母を亡くし、父が傷心し
弟が泣き叫ぶ中、
確かに寂しさを
殺した。
殺すしか無かった。
他の大人がいくら代わりをしてくれると言っても、父と千寿郎の身内は自分なのだと。
母から託された身なのだと。
それを。
それを泰葉には
こんなにも簡単に
見つかってしまった。