第12章 記憶
翌日、杏寿郎は一足先に蝶屋敷を出た。
槇寿郎に話を聞くべく、家路を急ぐ。
本当に骨折したのは嘘のように、軽やかに足が動いている。
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「ただいま帰りました!」
玄関を開け、声をかける。
すると、パタパタと足音がして
千「兄上!お帰りなさい!」
いつものように千寿郎が出迎えた。
しかし、今までと違うのは…
槇「…無事で何より。」
槇寿郎も少し遅れてだが、出迎えてくれるようになったのだ。
杏「はい!
今回の泰葉さんの件では、色々と尽力をくださり、ありがとうございました!」
槇「いや、それは音柱が知らせてくれたことだ。
俺たちは殴りにいっただけだ。礼を言うほどの事ではない。
それに、俺よりも千寿郎の拳の方が効いていたぞ。」
杏「よもや!千も殴ったのか?」
温厚な弟の拳など見た事が無い。
杏寿郎は驚いて千寿郎を見た。
千「いえいえ、そんな父上には敵いません。」
首を振る千寿郎だが、殴ったのは本当らしい。
槇「そして、泰葉さんの様子は?」
その質問に杏寿郎は頷いた。
杏「昨日は回復による熱にうなされていましたが、夜には落ち着き、今日は元気そうでした!
心配無いと思います!」
それを聞いて、2人はホッと肩を下ろした。
杏「父上、泰葉さんのことでお話があります。」
改めて槇寿郎を見る杏寿郎。
その表情で何の話かを分かったように、槇寿郎は頷いた。
槇「…部屋にきなさい。」
物々しい雰囲気になった父と兄に、千寿郎はドキドキしていた。
千( 泰葉さんが…姉上になったら…)
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槇寿郎の部屋に2人が向かい合って座る。
槇「お前は、あの一族の戦闘能力については分かっているな?」
杏「はい。粗方理解しているつもりです。」
槇「お館様からも聞いたと思うが、俺が助けに入った男は西ノ宮家の一族だった…」
槇寿郎は静かに、西ノ宮家との事を話し始めた…
その時、
「ごめんください!!!」
突然、外から大きな声がした。