第69章 私は…
杏「…泰葉さん。俺は君のことが一等好きだ。もう一度、俺と恋仲になってはくれないだろうか。」
杏寿郎は泰葉の目を真っ直ぐ見て、2度目の告白をする。
泰葉は、まさか改めて告げられるとも思わず、狼狽えた。
「えっ、だ、だって私…杏寿郎さんに酷いこと…」
杏「それでも尚、君のことが好きだ!」
「…わ、私も…好き…です。」
杏「では、また恋仲になってくれるか?」
「…はい、宜しく…お願いします。」
泰葉が俯き、両手で顔を隠す。
改めた告白に照れてしまい、杏寿郎の顔を見ることができなかった。
杏「…泰葉さん、顔を上げてくれないか。
俺の話はまだ終わってないのだが。」
「ひぇ…?今、恋仲に…なったじゃないですか。」
杏「それでは俺たちの仲を修復するには足りないぞ!」
泰葉は両手を外し、どういう事かと首を傾げる。
杏「泰葉さん、この、煉獄杏寿郎と結婚をして欲しい。
心から君を愛している。離れてみて、より実感した。
泰葉さんがいない世界など、考えられない。」
杏寿郎は泰葉の両手を取り、きゅっと握った。
真っ直ぐに見つめられたその目から、逸らすことなどできず。
杏「俺と…夫婦になってくれ。
今度こそ、死ぬまで君を離すつもりは毛頭ない。」
どうしてこの人は、こんなに真っ直ぐなのだろうか。
暖かいのだろうか。
「…はい。こんな私ですが、末永く宜しくお願いします。」
泰葉は深々と頭を下げた。
杏「あぁ!良かった!これで断られたらどうしようとドキドキした!」
しかし、泰葉の頭にあることが浮かぶ。
「っ!杏寿郎さんっ、あの、私…」
杏寿郎を見た瞬間に言葉に詰まる。
なぜならば、今から話そうとしていたものが、杏寿郎の手にあったからだ。
杏「ん?どうした?」
「どうして…それ…」
杏寿郎の手にあるのは、失くしてしまったと思われたネックレス。
中央には小さく光る赤いルビー。
杏「これか?留め具が壊れて、君の首から取れてしまっていたんだ。だから直してもらったぞ。」