I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
歩きくたびれてぐずり出したルナとマナを、何とかシャワーだけ浴びさせて布団に寝かせる。
そうすれば、5分も経たずにぐーすかと夢の中へと入っていった2人。
「…んー…凛子ちゃん…りん…ご飴……」
「ハハッ、ルナお前、夢の中でも椿木さんと屋台回ってんの?」
今日の花火大会が余程楽しかったのか、口元を緩めて寝言をこぼしたルナ。
そんな妹の様子に俺はクツクツと笑みをこぼす。
そして、俺の夢の中にも現れてくれねぇかな、なんて思いながら俺も布団に横たわる。
携帯のカメラロールを開いて、浴衣を着て笑う椿木さんの写真を眺めては今日の余韻にひたる。
会場に向かう前に撮った少しはにかんだ椿木さんの姿も、ルナとマナを両手に連れて歩く後ろ姿も、本当に愛おしく思えて目尻を下げる。
ルナとマナと椿木さんと4人で撮った恒例の家族写真のようなショットと、会場について2人で撮ったツーショットには、嬉しそうに笑う椿木さんと俺が写っていた。
コレどっちか待ち受けにしていいかな、なんて、だらしなく緩む口元を押さえながら考えていれば、ブブッとマナーモードにしていた携帯が揺れた。
そこには、新着メール1件 柴柚葉と表示されていた。
気になって開けば、『これ、我ながらいいショットだと思うんだけど、2人っていつの間にそういう仲になってたわけ?今度詳しく聞かせろ、そして何か私に奢れ。』と半分脅迫めいたメール。
添付写真を開けば、そこには、椿木さんが手にするかき氷のスプーンをぱくっと咥えた俺とそれを嬉しそうに見つめる椿木さんが写った写真と、椿木さんが俺の肩にもたれている手を繋いだ2人の後ろ姿が写った写真が展開された。
俺は返信ボタンを押すと、
『いつの間に撮ってたんだよ、恥ずかしーわ(笑)ちなみに、俺らまだ付き合ってねぇし、椿木さんに変な事言うなよ!』
と返す。
そうすれば、早くも返信が届いて、中身を確認すれば、
『は?!これで付き合ってないとかマジありえない。なら、何でまだ2人が付き合ってないのかを今度詳しく聞かせろ。』
と柚葉らしい少々男まさりな感じのある文章が綴られていて、俺は苦笑しながら『了解。』とだけ返信をすると、携帯を机の上に置いた。