I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
…ヒュウゥ……ドンッ…………
東卍のみんなが加わりひとしきりバカ騒ぎをして楽しんだ後は、それぞれが土手に座って、視界一面を覆う藍色の空にまばゆく咲く大輪の華を見て歓声を上げた。
赤に青に緑に金色に…鮮烈な光の花の数々が、私達を一夏の幻想的な世界へと誘っているかのように思える。
咲き誇る色とりどりの花火が、まるで命を燃やすかのようにパッと激しく煌めいては、別れを名残惜しむかのようにキラキラと輝いては消えていく。
私は、金色の星が枝垂れ柳のように長く長く尾をひかせては消えていく、そんなひどく美しく切ない様子を、ただ静かに見つめていた。
花火はいつ見てもキレイだけど、いつ見ても何故か少しだけ胸をきゅうっと締め付ける。
そんな気持ちにさせるのはどうしてだろう?
まるで流れ星のように舞い降りてくる残り火の輝き。
いつだって、手を伸ばせば届きそうなのにやっぱり今日も届かない。
まるで私とタカちゃんみたいだ、なんて感傷的なことを考えては一人苦笑した。
チラリと横を盗み見れば、頭上を見上げて微笑む綺麗な横顔が目に入る。
幾度となく見惚れた少し骨ばった綺麗な横顔。
優しく垂れ下がった大きな瞳の中には、いつかの夜に見たのと同じように、色鮮やかな光が映り込んでは夜空を彩る星のようにキラキラと輝いていた。
この愛おしい彼の横顔を、切ないほどに美しいこの夏の夜のワンシーンを、高鳴る鼓動の音と共に、永遠に心の中に閉じ込めてしまいたい。
いつまでもいつまでも忘れることがないように。
写真のように切り取って胸に飾ることが出来たらいいのにな。
浴衣から覗く色香に、とくんとくんっと波打つ胸。
右手の小指をほんの少し動かしてしまえば、きっとタカちゃんの左手に触れられるのに、どうしてその2㎝ほどの距離が超えられないんだろう?
触れてしまえば何かが壊れてしまうのではないかと、そんなことを恐れる怖がりな私の心。
ほんとは、もっとタカちゃんに近づきたいのにな。
誰よりも近くにいるはずなのに、今日だって、こんなにも恋しい。
私は、触れそうで触れない2人のもどかしい距離に、ふうと小さなため息をこぼし、すっかり溶け切ってしまったレモンとピーチの味がごちゃ混ぜになったかき氷を一口だけすすった。
口中に、ひどく甘酸っぱい味が広がった。