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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「…で、椿木さんはどうしてこんなとこにいんの?」

俺は横で小さく震えている椿木さんのことを見遣る。
いつもより不機嫌な俺の声を聴いた椿木さんは、ビクッと一瞬肩を強張らせると、バツが悪そうに目を泳がせた。

「…えっと、その……」

「…危ねーからここには来んなって言ってあったよな?」

「………うん…ごめ…なさ、い。」

妹に言い聞かせるように少し強く叱ってしまえば、椿木さんは、これでもかというほど眉を下げて今にも泣きだしそうな顔をする。

その顔を見て、俺は、たった今怖い思いをしたばかりの彼女に、理由も聞かずに強く言い過ぎてしまったことに気付く。

「…悪ぃ、別にそんな顔させたかったわけじゃなくて。」


「…………かったの。」


なんと言ってフォローしようかと適切な言葉を探していれば、今にも消えてしまいそうなか細い声が下から聞こえてきた。

「…え?今、何て「……タカちゃんに、早く逢いたかったの!!!」

尻すぼみでよく聴こえなかった言葉を聞き直そうとすれば、被せるように口を開いた椿木さんの真っすぐな声が響いた。

こちらを見上げる所為か少し上目遣いになった大きな濡れた瞳と目が合う。

俺は、はぁ~~~~~~~~~~~ッと盛大な溜息をつくと、その場にしゃがみ込んだ。

「…………いや……お前……それはずるくねぇ?」

手のひらで赤面する顔を覆いながら、指の隙間からチラリと椿木さんを覗けば、不安そうな面持ちで「え?」とこちらを不思議そうに見つめていた。

え? じゃねぇだろ。
ド天然なのか狙って言ってんだかわかんねぇけど、これじゃあ怒るもんも怒れねぇだろーが。

俺はそんな椿木さんに再度ため息を吐くと、腰を上げた。

「…はぁ……いきなり怒ってごめんな。でも、さっきみたいなこともあんだから、椿木さんはもう少し危機感もってくれねぇと困る。…あんま心配させんなよ。」

そう言って綺麗な髪を撫でれば、椿木さんはもう一度「ごめんね」と言って眉を下げる。

「ん。わかったならよし!」

妹達にするように頭をぽんぽん撫でて微笑めば、椿木さんの顔にも笑顔が戻る。

「さ、帰るか!」なんて、その笑顔を見てホッとするも束の間、俺は背後から嫌な気配を感じ、恐る恐る振り返る。
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