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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「…お母さん……みんなが居なくなってから、私は強がりばっかりを覚えていくよ。今じゃあ、甘え方も、頼り方も、泣き方さえもよくわかんなくなる。」

凛子は、少し痩せこけた母の頬を撫でると、眉を下げて微笑んだ。

そして、おもむろにポケットから音楽プレーヤーを取り出すと、イヤホンを耳にあてる。

そうすれば、お気に入りの曲が凛子の耳に流れてきて、ぽっかりと空いた心の隙間を埋めてくれるようだった。

凛子は膝を抱えて、美しいメロディーに耳を澄ませる。

「……なんでかな。今、物凄くタカちゃんに会いたい。」

抱えた膝に顔を埋め、瞳を閉じれば、三ツ谷の優しい笑みが浮かんでは消えた。

暫く綺麗なメロディーを聴きながら、物思いに耽っていれば、小さなブザー音が鳴り響く。

机に置き去りにされた携帯を手に取れば、新着メール一件と表示されていた。

From:タカちゃん
Sub
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集会が少し長引きそう。
近くのカフェかコンビニに入って待ってるよーに。
くれぐれも一人で帰ろうとしないこと!

P.S.
ルナマナは飯食わせてから出かけたので心配無用

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凛子は内容を確認すると、目じりを下げて、ふわりと微笑む。
そして携帯を閉じると、母に別れを告げ、病院を静かに後にした。

向かう先は一つ。
今逢いたい人に逢いに行くため、凛子は足を進めた。


ブォーンブォン…ウォンウォンッ……バリバリバリ……

病院から30分ほど歩けば、凛子は、三ツ谷がよく口にしている”武蔵神社”の駐車場に辿り着いた。

バイクの排気音とまばゆいバイクのライトに包まれたそこには、三ツ谷が身に着けているものと同じ東京卍會と刻まれた特攻服に身を包んだ柄の悪い連中の姿があった。

勢いで押しかけてしまったものの、こんな不良集団の中で一体どうすればいいのだろうか。

見知った銀髪頭を探すも見当たらず、凛子は急に不安と後悔に駆られ始める。

「…来たところでタカちゃん困らせるだけじゃん。馬鹿だな私…。」

そう呟いて踵を返せば、大きな手に後ろ手を引かれて、凛子は冷や汗を垂らした。
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