I don’t want to miss a thing.
第2章 …Please, don't stop the love.
ジリリリリリンッ!…ジリリリリリンッ!…
「……んん゛……ん゛?!?!………やっば!寝坊した!!!」
うるさく鳴り響く目覚まし時計の音に重たい目を薄っすらと開ければ、ソレが指し示す時刻に飛び起きる。
バタバタと家の中を駆けまわり身支度を整えると、昨日の夕飯の肉巻きを口に放り込む。
「…はー、昨日の残り物とっといてよかったぁ。」
それを少し咀嚼した後で勢いよく飲み込み、シャカシャカと歯磨きをしていれば、時計の針が07:32を指していることに気付く。
「……げげ、約束の時間過ぎてるじゃん!」
私は大急ぎで口をゆすぐと、もう一度だけ鏡を見て、家の外へと駆け出した。
マンションの外へと出れば、壁に背を預けて携帯をいじっている少し紫交じりの銀髪が目に入る。
「……ゴメンッ、タカちゃん!!!お待たせ!!!」
「おー、来た来た。ったく、俺のプリンセスはお寝坊さんで困りますねー。」
私の声に気付いたタカちゃんが携帯を閉じて、こちらに顔を向ける。
少し垂れた優しい瞳が私の瞳を捕らえれば、タカちゃんは楽しそうにクツクツと笑った。
そんなタカちゃんの姿に、申し訳なさと恥ずかしさが込み上げてきて一人ソワソワする私。
そうしていれば、「ハハッ、お前、何つー顔してんだよ。」なんて、タカちゃんはまた笑う。
「……ご、ごめん。」
「バーカ、冗談だって。どんな凛子だって、俺からしたら可愛くて仕方ねぇの。わかる?」
そう言って私の顔を覗きこんだタカちゃんの瞳がやけに優しくて、私の胸は不覚にもトクンッと脈を打った。
恋人になってもう2週間くらい経つのに、タカちゃんに名前で呼ばれるたびに、優しく見つめられるたびに、私の胸はドキドキして大変なことになる。
それなのにタカちゃんと来たら、そんな私にはお構いなし。
この紫色した綺麗な瞳は、日を追うごとに甘さを増していくばかり。
私の死因はきっと、心臓発作か、この甘い瞳に身も心も溶かされて消えてなくなっちゃうかどっちかだな。なんて。
そんな馬鹿な事を考えては、私は頬を緩めた。
「ん、」と差し出されたタカちゃんの大きな手に、私の小さな手を乗せれば、タカちゃんはキュッとソレを握って、ズボンのポケットにしまい込む。
そんな幸せな2人の物語は、まだまだ始まったばかり。